くだまき。

飽きるまで俺屍の自一族について垂れ流します。期間限定かも。

6.紘宮椎真

撫子第二子の話

 

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名前:紘宮 椎真(ひろみや しいま) 職業:剣士

1019年8月~1021年4月(1歳8ヶ月)

男20番、髪肌目すべて土

親:撫子、十六夜伏丸  子:花丸

得意:桂剥き

「もっと 強くなりたかったんだ…」

  • 素質写真無しです。紘宮家は最初だったのもあってSSの取り方も(取説をろくに読まなかったので)途中まで知らなかった上に素質が後々の考察に使えるとはあまり考えてなかったせいです。
  • 当時つけていたメモでは「火が一番高いけど土と水も高いから反省ができる、茶介と相性は悪い」と言う記述があります。このメモを見る限り正統派主人公属性かなという気持ちがあります。
  • 桂剥きが得意ということからまあ何かとマメで器用にこなすのかな~と感じていたメモもありました。
  • 彼で最も印象に残っているのは2代当主春賀を隊長として挑んだ初の大江山です。そのとき悪羅大将辺りに一撃で倒されてしまい、死地に陥ったというエピソードがあります。
  • このブログを立ち上げて経歴を見てようやく気づいた話としては、彼は春賀を当主とした世代にギリギリ入る程度の期間春賀を主体とした部隊に所属していたのですが、春賀世代で唯一初代の顔を知らず、なんなら自分の親の顔も一ヶ月しか見れていないという子でした。なんとなく珠洲子と春賀の間に立って明るく笑ってるイメージが強いのでそうは感じなかったんですけど今思うと一番人間くさかったのは彼かもしれません。
  • 戦闘面では装備のせいかよく覚えていないのですがとにかくもろくて打点も足りないと考えていた記憶はあります。脆いというより体力が低かったのかもしれない。
  • 春賀のそばで戦っていた頃は珠洲子が居たので珠洲子の影に隠れて戦っていたなという印象が強くて一方でいざ春賀と珠洲子がいなくなった頃には薙刀を振るう三代目当主の椛がブイブイ言わせ始めていたので彼が表立って主戦力になった覚えは無いです。
  • ただ一言「戦力不足」で尽きてしまう状況に彼自身コンプレックスを抱いていたことを裏付けるかのような遺言の引きもあって春賀世代で印象が一番強いのはやっぱり椎真でした。
  • でも椎真の優しさや真面目さに救われてた人はすごく多いと思うんですよ、そんな春賀世代です。

次は春賀の子、苑華。

 

 

 

下記は大江山事件の小話。

 

・白を越える夢を見る

 

 気づいたら雪の上に倒れていた。それが最初の「悔しい」と感じた記憶。

 雪の冷たさに、寒さに、雪よりもぬるい液体の気配にまなこを開けた先に、曇天の空と自分の名を呼ぶ姉の姿を見たのはいつの話だったか。

 初代当主様もそうであったと教えられた赤い髪を揺らす当主様は、小さく、帰ろうと呟いていた。

「わたくしの采配により、その御身を死の淵へと追いやってしまったこと、深くお詫び申し上げます」

 家に戻り、ようやく体を起こせるほどの体力を取り戻した頃に、赤い髪の当主様は弓をつがえるその手を畳につけて、いつもしゃんと伸ばした背筋をすらりとさせたまま、頭を垂れた。

 何度か目を覚ましていたときに、姉の怒る声が聞こえていた。

 彼女はこの数日、どれだけの時間、この姿勢を繰り返したのだろうか。

「大丈夫、大丈夫だよ春賀姉。生きてるし。むしろごめんな。俺が弱くて」

だから、どうかその頭を上げて。いつものように笑ってほしい。

 

 家族が増えるたび、戦った。夏の気配を感じた季節、当主が、春賀姉が体を悪くした。

 姉貴を隊長として、討伐へと向かって、俺はまた倒れかけていた。

「ごめんね、しい。ありがとう」

 青の髪を揺らしながら鬼へと向かう姉の姿は美しかった。

 いつも後ろで矢をつがえ、放つ当主もきっと美しかった。

 

 つまるところ、俺は、弱かったのだ。鬼と戦うにしたって、力が強いわけではなく、姉貴のように耐えられるわけじゃなかった。ただ、その現実を見たくなかったと言えば嘘になる。知ることもなく、あの果てしなく白い山で討ち死にできたらどれほど楽だっただろうか。

 自分を信じることのできなかった当主様は、姉の娘に当主を任せて、最後まで己の強さを知ることなく逝ってしまった。

 当主様の弟さんは、みなの未来を祈って逝ってしまった。

 姉貴は、なにも言わず、ただ別れの言葉をポツリと呟いて逝ってしまった。

 新しい家族が増えるたび、出陣することは減っていった。それでも庭で鍛錬をすることだけはやめられなかった。

 あの日頭を下げた彼女の姿を思い出すたび、強くならなければ、と思うのだ。だから、次代は、せめて守り抜こうと。

 

 はたして、次代は守れたのか。先代当主であった彼女を、姉を、おじを。皆を守ることはできたのか。

 次代はみんな俺より強くなってしまった。

 新しい当主の彼女もとても頼りになる。それでも彼女はおそらく、まだ山は越えられない、とつぶやくのだ。俺は、どちらにも胸を張れる人生を送れたのだろうか。

「もっと、強くなりたかったんだ」

 あの白い山を超えられるほどに。